トップ / 伊勢ゆかりの人物
10 — 人物録
神宮を支え、
伊勢から世界へ出た人々。
伊勢の歴史は、神話の人物から、中世の神官、戦国の尼僧、そして近代の実業家まで、多くの人々の情熱によって紡がれてきました。教科書には載らないけれど、知っておくと伊勢がもっと面白くなる人物たちを紹介します。

神話と中世
伊勢の礎を築いた人々
倭姫命(やまとひめのみこと)伝承
天照大御神を伊勢に導いた皇女
垂仁天皇の皇女とされ、天照大御神の鎮まる地を求めて各地を巡り、伊勢の五十鈴川のほとりに大神をまつったと伝えられます。神饌の制度や、国崎の鮑の奉納など、神宮の祭祀の多くが倭姫命に由来するとされます。
のちに倭建命(やまとたけるのみこと)が東征に向かう際、叔母である倭姫命が草薙剣を授けたという話も『日本書紀』に記されています。
度会家行(わたらい いえゆき)1256頃–1351頃
伊勢神道を大成した外宮の神官
外宮の神職を代々務めた度会氏の一人。仏教の影響が強かった時代に、神道を独自の思想として体系化した「伊勢神道(度会神道)」を大成しました。主著『類聚神祇本源』は、南朝の重臣・北畠親房の思想にも大きな影響を与えたとされます。
荒木田守武(あらきだ もりたけ)1473–1549
内宮の神官にして、俳諧の祖
内宮の禰宜(ねぎ)を務めた神官。連歌の余技として生まれた「俳諧」を独立した文芸として確立し、『守武千句』を残しました。山崎宗鑑とともに「俳諧の祖」と称され、のちの松尾芭蕉へと続く流れの源流の一人です。
慶光院清順(けいこういん せいじゅん)?–1566
120年以上途絶えた遷宮を甦らせた尼僧
宇治の尼寺・慶光院の住職。戦国時代に途絶えていた式年遷宮を再興するため、諸国を巡って寄付を募り、永禄6年(1563)、外宮の遷宮を129年ぶりに実現しました。その遺志は後継の周養に受け継がれ、天正13年(1585)の両宮遷宮につながります。
江戸から近代へ
伊勢の知と、伊勢から出た人々
本居宣長(もとおり のりなが)1730–1801
伊勢国松阪の国学者
伊勢国松阪(現在の松阪市)の人。35年をかけて『古事記伝』を完成させ、国学を大成しました。神宮とは目と鼻の先に暮らし、生涯に何度も伊勢に参っています。宣長が築いた国学は、のちの神宮のあり方や近代の神道にも大きな影響を与えました。
足代弘訓(あじろ ひろのり)1784–1856
外宮の神官にして国学者
外宮の権禰宜を務めた国学者。多くの門人を育て、学問の拠点としての伊勢を支えました。天保の大飢饉の際には、困窮した人々の救済に力を尽くしたことでも知られます。
尾崎行雄(おざき ゆきお)1858–1954
「憲政の神様」は伊勢で育った
相模国(現在の神奈川県)に生まれ、少年時代に一家で伊勢に移り住みました。のちに三重県から衆議院議員に選出され続け、在職は60年以上。「憲政の神様」と呼ばれました。伊勢市には尾崎咢堂記念館があり、ワシントンに贈った桜の話とともにその生涯を伝えています。
御木本幸吉(みきもと こうきち)1858–1954
伊勢志摩から世界へ――真珠王
鳥羽のうどん屋の長男に生まれ、明治26年(1893)、世界で初めて真珠の養殖に成功しました。「世界中の女性の首を真珠で飾りたい」という夢を追い、ミキモトの真珠は世界的なブランドになります。伊勢の町のために私財を投じて道路を整備し、その道は今も「御木本道路」と呼ばれています。
現代と、番外編
門前町を救った人、伊勢志摩を愛した作家
浜田益嗣(はまだ ますたね)1937–
門前町の再生を仕掛けた経営者
赤福の社長として、衰退していた内宮門前町の再生に取り組み、1993年の「おかげ横丁」開業を主導しました。一企業の枠を超えて町全体の再生を構想した取り組みは、全国のまちづくりの先例として知られています。
江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)1894–1965
番外編:鳥羽で暮らした推理作家
作家になる前の大正時代、鳥羽の造船所で働いていたことがあります。この地で出会った女性と結婚し、また鳥羽の画家で民俗学者の岩田準一とは生涯の友となりました。伊勢志摩の海辺の風景は、乱歩の作品にもその影を落としています。
伊勢を詠んだ人々
言葉に残された伊勢
何事の おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる西行の作と伝えられる歌。伊勢参りの心を表す歌として、今も広く愛唱されている
何の木の 花とはしらず 匂哉松尾芭蕉。貞享5年(1688)、外宮に参拝した際の句
平安時代末期の歌人・西行は、晩年の数年間を伊勢の二見のあたりで過ごしたとされます。「何事の……」の歌は西行の作として広く知られていますが、確かな歌集には見えず、西行に仮託されたものとする見方もあります。
松尾芭蕉は、伊賀国(現在の三重県伊賀市)の出身。生涯に何度も伊勢を訪れ、神域の森の中で、名も知らぬ木の花の香りに神々しさを感じた一句を残しました。
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伊勢の人にとっての、当たり前
一年中の注連縄、朔日参り、お白石持ち。地元の人には常識でも、外から来た人には驚きの話を集めました。

