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09 — 伝説
本当か、嘘か。
金沢の都市伝説を検証する。
古い町には、古い噂が積もります。忍者のいない「忍者寺」、ハトが寄りつかない銅像、 港の船を導いたという神社の門。金沢で語り継がれる話を一つずつ取り上げ、 どこまでが確かめられる史実で、どこからが伝承や噂なのかを、ラベルで示しながら読み解きます。

- 史実史料・記録で確かめられる
- 有力説有力だが異説もある
- 伝承言い伝え・逸話
- 都市伝説根拠の乏しい噂
その一
忍者寺に、忍者はいたのか。
寺町にある日蓮宗の寺・妙立寺は、「忍者寺」の通称で知られています。三代藩主・利常の時代にこの地へ移されたとされ、外から見ると2階建てなのに、内部は4階7層。部屋の数は23、階段は29もあると言われます。落とし穴になる賽銭箱、床板を外すと現れる隠し階段、見張り台――まさに「からくり屋敷」です。
史実こうした複雑な構造は実在します。ただし忍者との関係を示す史料はありません。「忍者寺」は仕掛けの多さから付いた通称で、寺側も忍者の寺ではないと説明しています。幕府と緊張関係にあった時代、城下の南の守りとして、見張りや非常時の拠点を兼ねた建物だったと考えるのが自然でしょう。外観を2階建てに見せているのは、当時の建築規制を意識したためとも言われます。
都市伝説本堂の井戸の底が金沢城まで続く抜け穴になっている、という話も有名です。距離や地形を考えると、実際に城までつながっていたとは考えにくく、伝説の域を出ません。
妙立寺の見学は予約制です。最新の情報は寺の案内をご確認ください。
その二
ハトが止まらない銅像
兼六園の中央にそびえる明治紀念之標の日本武尊像。明治13年(1880年)、西南戦争で亡くなった石川県出身の兵士を慰霊するために建てられた、日本で最初の屋外の人物銅像とされます。
この像には昔から、不思議な噂がありました。「なぜかハトやカラスが止まらない」。
史実これを本気で調べたのが、金沢大学の廣瀬幸雄教授でした。調査の結果、銅像の素材にヒ素が多く含まれていることが分かり、それが鳥を遠ざけている可能性が示されました。この研究は2003年、「人を笑わせ、考えさせる研究」に贈られるイグノーベル賞(化学賞)を受賞しています。噂が、科学になった例です。
台座の石組みにも注目を。ナメクジ、ヘビ、ヒキガエルの形をした石が組まれ、互いに牽制し合う「三すくみ」が表現されていると言われます。伝承
その三
神社の門は、灯台だった?
前田利家とまつを祀る尾山神社の神門は、明治8年(1875年)に完成した三層の門です。和・漢・洋の様式を混ぜ合わせた奇抜な姿で、最上層にはステンドグラスがはめ込まれています。国の重要文化財です。
伝承この最上層には、かつて灯りがともされ、日本海を航行する船の目印になった――つまり灯台の役割を果たしていたと伝えられています。ただし、市街地から海までは数km離れており、どの程度実用的だったのかは分かっていません。
有力説屋根の上には避雷針があり、日本最古の避雷針とされ、今も現役だといいます。
都市伝説地元では「この門はオランダ人が設計した」という話が広く語られてきました。オランダ人医師ホルトマンが雷対策などの助言をしたとされるものの、実際には、ホルトマンが金沢に来る前に棟梁・津田吉之助が最初の計画図を描いていたことが分かっています。設計は日本人の大工によるものだったのです。
その四
兼六園の灯籠は、なぜ脚の長さが違うのか。
兼六園の絵はがきで必ず目にする徽軫灯籠(ことじとうろう)。二股に分かれた脚が琴の糸を支える「琴柱(ことじ)」に似ていることから名づけられました。よく見ると、片方の脚が短く、池の中の石に乗っています。
「わざと長さを変えて、水辺の景色に変化をつけた名工の遊び心」と説明されることもありますが、有力説幕末の絵巻では両脚がそろって描かれており、その後に移設された際などに今の形になったと考えられています。現在の灯籠は昭和53年(1978年)に据えられた2代目です。偶然が生んだ非対称が、いまや金沢を代表する風景になっているのです。
その五
金沢が空襲を免れた「本当の理由」
第二次世界大戦中、日本の主要都市の多くが空襲で焼かれましたが、陸軍第九師団の司令部が置かれていた金沢は、大規模な空襲を受けずに終戦を迎えました。
都市伝説その理由として、「京都と同じように、古い文化財を守るためにアメリカが攻撃を避けた」「金沢に住む誰かがアメリカに働きかけた」といった話が語られることがあります。しかし、それを裏づける資料は見つかっていません。
実際には、空襲の順番は都市の規模や軍需工場の有無などをもとに決められていたと考えられ、金沢は単に順番が回ってくる前に終戦を迎えた、とみるのが一般的です。はっきりした「理由」がないことこそ、歴史の偶然の重さを物語っています。
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「きのどくな」と言われたら
伝説の次は、言葉の話。金沢の人が普段使う言葉には、この町の気質がにじんでいます。


