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10 — 言葉
「きのどくな」は、
ありがとうの意味。
お店でお釣りを受け取ったおばあちゃんが「きのどくな」と言う。道で滑りそうな朝は「きんかんなまなまや」。 金沢の言葉には、控えめで、相手を気づかう城下町の気質がにじんでいます。 旅行者が覚えておくと少しだけ得をする、金沢ことばの手引きです。
いちばん大事な言葉
なぜ「気の毒」が感謝になるのか。
標準語の「気の毒」は、相手をかわいそうに思う言葉です。ところが金沢では、何かをしてもらったとき、「あら、きのどくな」と言います。意味は「ありがとう」。
もともとは「(私のために手間をかけさせて)あなたに気の毒なことをした」という、恐縮の気持ちから来た言葉だと考えられています。感謝をそのまま言うより、相手にかけた負担を気づかう――控えめで、角を立てない城下町らしい言い回しです。
ほかにも、感謝を表す言葉に「あんやと」(ありがとう)があります。こちらはもう少し気軽な言い方。若い世代では使う人が減っていますが、年配の方との会話ではまだまだ現役です。
金沢の言葉は、北陸の他の地域の方言と共通する部分が多い一方で、藩が京都の文化を積極的に取り入れたこともあり、やわらかく丁寧な響きがあるとよく言われます。同じ石川県でも、能登や加賀南部とは言い回しやイントネーションが少しずつ違います。
金沢ことば手引き
覚えておくと、ちょっと得する言葉
意味と使い方を、例文とあわせて。地域や世代によって使い方には幅があります。
ありがとう(恐縮です)
「こんなにたくさん、きのどくな」=こんなにたくさん、ありがとう。
〜してください、〜しなさい
「食べまっし」「見てきまっし」。やわらかい勧めの言い方で、金沢弁の代表格。
ばか、あほ
「だらなこと言うな」。さらに強めると「だらぶち」。使いどころに注意。
お行儀がいい、おとなしい
「かたい子やねぇ」は、子どもをほめる言葉。頑固という意味ではありません。
差し支えない、大丈夫
「つかえんよ」=構わないよ。「使えない」と聞き間違えやすいので要注意。
もどかしい、じれったい、悔しい
「なかなか進まんで、はがやしいわ」。標準語に置き換えにくい、金沢らしい言葉。
うっとうしい、わずらわしい
「前髪がいじっかしい」。天気や人に対しても使います。
もったいない
「まだ使えるのに捨てるが、おとましい」。倹約家の多い土地柄がにじむ言葉。
かわいらしい、愛嬌がある
「あいそらしい赤ちゃんやね」。
少し、ちょっと
「ちょっこし待っとって」。
傾く
「その額、かたがっとるよ」。北陸で広く使われる言葉です。
いいえ、全然
「なーん、つかえんよ」=いえいえ、大丈夫ですよ。
〜なんだ、〜なの
「そうなげん」「行くげん?」。語尾で金沢の人だと分かる代表的な言い方。
(路面などが)凍ってつるつるの状態
冬の朝、雪が踏み固められて凍り、てかてか光る道のこと。語感で覚えたい雪国ならではの言葉。
旅のヒント
言葉から見える、金沢の人づきあい
金沢の人は、初対面では少し控えめで、すぐには打ち解けないと言われることがあります。けれども、それは冷たいのではなく、相手に踏み込みすぎない城下町の礼儀のようなもの。「きのどくな」「つかえんよ」といった言葉のやりとりには、相手に負担をかけまい、気をつかわせまいとする心配りが込められています。
旅先で「きのどくな」と言われたら、それは「ありがとう」のこと。「なーん、つかえんよ(いえいえ、大丈夫ですよ)」と返せたら、金沢の人の表情がふっとゆるむかもしれません。
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